「コンディショニングブランド」としてさらなる進化へ、TENTIALリブランディングの舞台裏
2018年2月、東京・神泉のアパートの1室からスタートしたTENTIAL。丸6年が経過した現在では100人規模の組織へと拡大し、ウェルネスブランド「TENTIAL」で扱ってきた製品も50を超えるようになってきています。
「健康に前向きな社会を創り、人類のポテンシャルを引き出す」。このミッションの実現に向けてさらに加速するべく、TENTIALでは7期目のスタートに合わせて、コーポレートブランドを一新します。ブランドの世界観を象徴するロゴを変更するとともに、コーポレートサイトやECサイト、ミッションステートメント、行動指針などもアップデートしていきます。
2023年春からから始動したリブランディングプロジェクトでは、社外のプロフェッショナルの方々にも協力いただきながら、新しいTENTIALのVI(ビジュアルアイデンティティ)について模索してきました。
今回のリブランディングの背景や新たなVIに込めた思いについて。プロジェクトを推進してきた代表取締役CEOの中西と、執行役員ブランド戦略本部長の横田に聞きました。
事業成長に伴って直面したロゴの課題━━リブランディングの背景
── リブランディングのプロジェクトが本格的に動き出したのが、2023年の春頃だったかと思います。どのような背景でプロジェクトが始まったのでしょうか。
中西 : 事業としても組織としても急速に拡大している中で、ウェルネスブランドとしてのTENTIALをアップデートさせるべき時期に来ていると感じたのがきっかけです。実際に会社の変化に伴って、ブランディングにまつわる課題が生まれ始めていました。
その1つがロゴに関するものです。以前のロゴマークは円形だったのですが、製品に印刷する際や、店舗什器で表現する際にレイアウトを維持するのが難しくなってきたんです。
2019年に作成した旧ロゴは、創業期からTENTIALの軸になっていた「スポーツ」と「テクノロジー」の2つの文脈をベースに考えたものでした。
著名なスポーツブランドのロゴを見ると、ナイキやアディダスを代表するように、シンプルだけど太くて力強いロゴを用いている企業が多かった。一方でテクノロジー企業は、ロゴにグラデーションを使用している印象があったんです。
そこでTENTIALではその2つを掛け合わせるようなイメージで、形状は太くて丸く、カラーにはグラデーションを取り入れたロゴに決めました。当時から「印刷したら同一性を担保できないかもしれない」、「ブランドをマネジメントする観点だとリスクがある」といった議論はあったのですが、新しいことにチャレンジしてみようと。
ただ2019年にTENTIALブランドを設立してから製品の数がどんどん増えていくに従って、やっぱり難しい局面が増えていったんです。今後も製品の数は拡大する方針ですし、実店舗にも力を入れていきます。ゆくゆくは国内だけでなく、グローバル展開の計画もあります。
そういった未来を見据えていく上でも、「ブランドを適切にマネジメントする」という観点で、VIを見直していくべき。そのような考えに至りました。
── 以前のVIを作った当時と比べて製品の数(SKU)が大幅に増え、実店舗での展開にも力を入れ始めている。事業を取り巻く環境が変わってきたことも大きかったんですね。
中西 : そうですね。今後さらに多くのお客様にTENTIALを知っていただき、製品を手に取っていただくことを目指す上で、リブランディングの必要性を感じていました。
一方で組織的な文脈では、これまで「コーポレートとしてのTENTIAL」と「ブランドとしてのTENTIAL」で、名前は同じものの表記やコミュニケーションを分けていたんです。これを共通の新ロゴに統一したいという意図がありました。
僕個人としては、信頼できるブランドは「内側にしっかりとした芯がある」と考えています。それがあるからこそ、社内外問わずコミュニケーションがブレることなく、信頼が蓄積されていく。そのようなブランドを目指すにあたり、表裏のない状態にしたかったので、コーポレートもブランドもロゴを統一して、強固な1本の芯を作りたいという思いがありました。
テーマは「引き継ぎ」、これまでの歴史やアセットを引き継いだVIへの挑戦
── リブランディングを検討し始めたのも、1年ほど前からだったのでしょうか。
中西 : 印刷の課題などは以前から少しずつ感じ始めていたので、リブランディングの議論も2年ほど前から進めてはいたんです。タイミングが後ろになればなるほど、組織も大きくなるし、製品も店舗も増える。早く意思決定すべきだとは考えていました。
ただ、リブランディングをするのは簡単ではありません。VIを変えることはもちろん大変ですが、「新しいVIができればそれで終わり」というわけではない。そのVIをどのようにマネジメントしていくのか。どのように育てていくのかが重要になります。
そういった意味では、横田さんがジョインしてくれたというのも、意思決定できた要因の一つです。実際に今回のプロジェクトでもVIの変更に合わせて、ECサイトやミッションステートメント、行動指針などさまざまなものをアップデートしていて、今後変更予定のものもあります。
横田さんは、TENTIALブランドがローンチした時のことを知っている数少ないメンバーの1人です。もともとは外部のコンサルティングのような形でサポートしていただいていたのですが、TENTIALブランドの礎は横田さんと一緒に議論しながら作ってきたもの。
その横田さんと再び一緒にブランドをアップデートさせていくということもあって、個人的にはワクワクする気持ちがありました。
── 横田さんが正社員としてジョインされたのは昨年ですが、ブランド事業の立ち上げ当初からTENTIALに伴走されてきました。そういう意味ではVIをアップデートするにあたって、強い思いがあった反面、名残惜しさのようなものもあったのではないでしょうか。
横田 : それはなかったですね。というのも今回は、完全に別物を作るわけではなく「これまでのVIの意思やアセットを引き継ぎながら、TENTIALのアイデンティティや目指している方向性に沿ったVIを実現すること」にチャレンジしたからです。
これまでの事業成長の歴史と、これから先に思い描く会社や事業の広がり。そのようなTENTIALの変化を踏まえながら、これまでのVIをさらに進化させていくという前提で、議論を進めてきました。
中西 : これまでのVIからの「引き継ぎ」は1つのテーマでしたよね。
TENTIALが歩んできた歴史をどのように踏襲していくか。現在に至るまでの進化の過程みたいなものは、しっかりと残していきたい。そしてこれからのTENTIALへと繋いでいけるようなVIにしたいという思いが強かったです。
── そのようなテーマを掲げて試行錯誤した結果として、「T」を用いた新しいロゴが生まれたんですね。
中西 : 一見シンプルなTのマークなのですが、実は「折り目」がついていて、折り紙みたいになっているんです。これは円形の旧ロゴを1本のラインに引き伸ばして、それを折り返してTになっているというストーリーがあって。これまでのTENTIALからかけ離れたものではなく、しっかり継承されたブランドであるという思いが込められています。
横田 : Tを表現している1本のラインには、様々なものと“つながっている”という意味も込めています。そもそもTENTIALは、さまざまな方々と事業を共創しながら成長してきた会社です。アスリートやスポーツドクター、製造パートナーの方々などとのつながりの中でミッションの実現に取り組んできましたし、これからもそうです。TENTIALの特徴を表現するという意味でも、すごく良いロゴができたと考えています。
24時間365日、あらゆる面から「コンディショニング」を支えるブランドへ
── ロゴのお話もでたので、実際のリブランディングのプロセスについて、もう少し教えてください。今回は社内のメンバーに加えて、外部のプロフェッショナルの方にも協力いただきました。
横田 : リブランディングのプロジェクトは2023年の4月頃から本格的に始動しています。
TENTIALのメンバーは僕と中西さん、それからブランドおよびコーポレートのクリエイティブ全般に関わっている宮川さんの3人が中心です。
そこに社外のパートナーとして、ロゴの制作などで6Dの木住野彰悟さん。ミッションステートメントのアップデートにおいては、企業のタグラインやステートメント、コミュニケーションコピーまで幅広く言葉を紡ぐことができる、サン・アドのコピーライターの内藤零さんにも協力いただきました。
木住野さんとはご一緒するのは今回が初めてでしたが、もともとデザイン界では実績が豊富で著名な方です。例えば京都新風館のリニューアルに伴うVI・サインの計画、KIRIN Home Tapのプロジェクトなど、幅広いクリエイティブを手がけていらっしゃいます。
実は僕自身が新風館に行ってみて、ユーザーの目線で「洗練されていて独自性のある良いロゴデザインだなぁ」と感じたことが、木住野さんとご一緒したいと思ったきっかけなんです。
背景でもお話したように、TENTIALの場合は事業の特性上、ロゴ単体としてではなくパッケージや実店舗などにおけるサインなども含めて包括的に考えていく必要がありました。だからこそ、ロゴの制作からリアルなパッケージやサインまで、全てを一貫してご相談できる方を探していたんです。
その点、木住野さんはまさにTENTIALが求めていたような方でした。
── そのような実績がある方がスタートアップのTENTIALとご一緒してくれるのは嬉しいですね。
横田 : 本当にそうですね。TENTIALのポテンシャルに期待していただけたところもあったのではないかと思います。TENTIALブランドが大きくなっていけば、そこに携わってくださった6Dさんたちにとっての実績としても捉えていただけると思うので、そうなるようにしていきたいですよね。
── リブランディングの背景には、会社やブランド事業が大きな変化を迎えていたこともあったというお話がありました。今回VIをアップデートするにあたって、顧客への提供価値やブランドとしてのポジショニングなどついても改めて根本から議論されたそうですね。
横田 : 実際にプロジェクトが始まった初期のタイミングでは、そもそもTENTIALが「お客様に対してどのような価値を提供しているのか」を議論するワークをやりました。
お客様へ何を約束していく会社なのか。そこにどのような独自性があるのか。改めて認識をすり合わせながら言語化を進めていった上で、その価値を体現するVIはどのようなものかを考えていきました。
── その過程で「コンディショニングブランド」としての存在感を高めていく、といった考えも整理されたわけですね。これは今後のTENTIALにとっても1つのテーマになりそうです。
横田 : TENTIALのブランドのコンセプトは「コンディショニング」というものを日常に落とし込んでいくことです。アスリートの知見やノウハウを享受できるような製品を通じて、一般の生活者の方々のコンディションが良くなっていき、結果として日々のパフォーマンスが向上する。そのような構造になっています。
根本自体はずっと変わりませんが、これまでは「リカバリーウェア」や「ウェルネス」「ヘルスケア」など色々なワードが飛び交っていて、会社としてはっきり言語化できていない部分があったんです。
リカバリーウェアやインソールのように一つひとつの製品を切り出すと、それぞれに競合となる製品はいくつも存在します。でもブランドを通じて「24時間365日、あらゆる面からコンディショニングができる製品を届けることにコミットする」という点については、TENTIALならではのユニークネスだと思ったんです。
まずは「TENTIAL=コンディショニング」として実績とイメージを蓄積していった先で、ミッションにもつながる「人々のポテンシャルを引き出すことができる社会」を実現していきたいと考えています。
意識したのは「成長を前提としたVI」
── 新ロゴに関しては、これまでのTENTIALからの「継承」やさまざまな方々との「繋がり」といったようなテーマがあるとのことでしたが、形状だけではなくカラーも変わりましたよね。ベージュが目立つようになりました。
横田 : そこは大きな変更点です。旧ロゴのカラーはグラデーションになっていたものの、軸になっていたのはピンク、青、紺の3色でした。新たなVIでは青と紺を引き継ぎながら、ポイントとなるカラーにはアースカラーを取り入れています。
これは先ほどもお話したとおり、TENTIALでは「24時間あらゆる面から人々のコンディショニングをサポートすること」を目指しているから。
新たにアースカラーを採用したのも、お客様の日常生活に寄り添い、常に肌に触れるものとして、少しでも親しみやすさを感じてもらえるものにしたかったからです。「ひとのコンディショニングから地球のコンディショニング」まで、サステナビリティにも向き合っていくという今後の会社の姿勢も込めています。
また事業の成長に合わせて、VI自体も拡張できるような余白を残すこと、言わば「成長を前提としたVI」を意識しました。現在のブランド事業から他関連事業への展開も社内で検討していたりするので、ロゴにおいても事業の拡張に耐え得る“可変性”と“連関性”を考慮しています。
── ECサイトやミッションステートメントにおいても、同じようなコンセプトや考え方に基づいてアップデートされたのでしょうか。
横田 : おっしゃる通りです。ECサイトは4月にリニューアル予定なのですが、例えば製品カテゴリーの名称を見直します。
これまではTENTIALの製品を大きく「SLEEP」「FOOT」「WORK」の3つに分類していたのですが、今回から「Day Conditioning」と「Night Conditioning」の2つに分ける計画です。
この根底にあるのも、24時間にわたってコンディショニングに寄り添っていくという考え方です。製品のラインナップが増えてくる中で、従来の分類方法では「どのカテゴリに入るのかがわかりづらい製品」も出てきていました。
日中のコンディショニングをサポートするものと、夜間のコンディショニングをサポートするもの。お客様の目線で、よりわかりやすいようなカテゴリを目指していきます。
── 先ほどの横田さんのお話にもあったように、ミッションステートメントには「地球のコンディショニング」という壮大なフレーズも加わりました。
横田 : 前半部分はこれまでのミッションステートメントをかなり踏襲しています。「休むこと」と「進むこと」の両方をもっと良くしていく。つまりDayとNight、24時間のコンディショニングに寄り添うことを意識したところからスタートしています。
それが積み重なった結果として、“地球のコンディショニング”という概念にも触れているのですが、個人的には最後の4行に大事なことが凝縮されているように感じているんです。
TENTIALがこのブランドを通じてポテンシャルを引き出す対象としては、さまざまな人々やシーンが含まれています。例えば「夢」を追いかけているアスリートの人もいれば、「克服」と言っているように怪我や不調から再起しようと頑張っている人もいます。
またTENTIALはギフト需要もすごく増えていて「自分が試して良かったから、家族や大切な人の健康を願ってプレゼントをする」というシーンでも使われています。そのような「親愛」、そこから生まれてくる「笑顔」といった文脈もある。健康寿命の観点では「永遠」のような話にも関わってきます。
「夢も、感動も、克服も、親愛も、笑顔も、永遠も。」
という言葉からは、コンディショニングに取り組むいろいろな人の顔が思い浮かびます。そして最後の2行は、「前向きさ」や「ポテンシャル感」が耳触り良く表現されていて、TENTIALの思いが詰まった表現になっているなと。
このミッションステートメントを具現化して、社内外に発信していくのが次の僕の役割かなと思っています。
中西 : 会社のフェーズや世の中のトレンドの変化に合わせて、細かい表現などチューニングしましたが、自分たちの本質は変わっていない。リブランディングをすると、会社の方向性が大きく変わったのではないかと思われたり、もしかすると「ブレているのではないか」と思われたりすることもあるかもしれません。
でもTENTIALの目指すところは変わらないし、むしろみんながより納得感が持てるようにブラッシュアップできたので、今まで以上に洗練された感覚があります。
TENTIAL7期目、新たなVIと共に次なるステージへ
── 新しいブランド、VIを育てていくことも重要になるというお話がありました。最後に今後チャレンジしていきたいことについて教えてください。
中西 : 今回VIを考えるにあたっては、TENTIALで働くBuddyの考えや行動、価値観を集約するようなイメージで進めてきました。投票などで決めたわけではありませんが、普段から社内で交わされる会話や現場の声などを踏まえ、個人ではなく“TENTIALを主語にして”検討を重ねてきました。
今後は全員でこのブランド、VIを育てていきたいですね。例えばワークショップのようなものを設けるとか、「このブランドを自分が育てた」「そのプロセスに参加した」という実感が得られるような機会を増やしていきたいと考えています。
考えてみると、芽が出始めたばかりのブランドを育てながら伸ばしていく経験ができる環境って、そんなに多くはないと思うんです。もちろん日本発で、世界に誇れるような大きなブランドはいくつも存在します。でも今からブランドを立ち上げて自らの手で育てていくプロセスが経験できる場所は、限られています。
これは会社や事業のフェーズの問題も大きいので、TENTIALのBuddyにはこの状況を楽しみながらブランドを一緒に育てて欲しいですし、このプロセスに参加してくれる仲間が増えると嬉しいですよね。
TENTIALとしては、2月1日から7期目に突入しました。引き続きミッションに掲げる世界観の実現に向けて、新たなVIとともに挑戦し続けていきたいと思います。
TENTIALにご興味を持っていただいた方は、ぜひ下記のリンクもご覧ください!