今、TENTIALのtoB事業が面白い── 。大手ホテルや航空会社との共創が加速、TENTIAL×toBビジネスの現在地
今、TENTIALの法人向けビジネスが面白い── 。
これまでTENTIALでは主に個人のお客様に向けて、リカバリーウェア「BAKUNE」を始めとしたコンディショニング製品をお届けしてきました。そのため「TENTIAL=toCビジネスの会社」として認識されている方も多いかもしれませんが、実はコンディショニングやウェルネスをテーマとしたパートナー企業の皆様との共創が徐々に広がってきています。
2024年11月、TENTIALでは日本初上陸の自然派ラグジュアリーホテル「シックスセンシズ 京都」との新たな取り組みを発表しました。
シックスセンシズ 京都はウェルビーイング(心身の健康)の思想をとても大切にされており、中でも睡眠環境に関しては独自の快眠プログラムを提供するほど、強いこだわりを持たれています。今回ホテル内の全室に再生ポリエステル素材のリカバリーウェア「BAKUNE Pajamas Gauze」を導入いただいたことで、TENTIALとしてもご宿泊ゲストの「コンディショニング」を一緒にサポートしていくこととなりました。
なぜ、このような共創が広がってきているのか。TENTIALではどのような考え方でtoBビジネスに取り組んでいるのか。TENTIALでtoB事業の開拓を担うラルストン朋子に、「TENTIALのtoBビジネス」をテーマに話を聞きました。
著名ホテルや航空会社と共創、TENTIAL×toBビジネスの今
── この数か月の間にシックスセンシズ 京都様やANAビジネスジェット様を始めとした共創パートナーの方々との取り組みが発表されています。改めてTENTIALのtoBビジネスはどのような状況でしょうか。
現在は80社程度の企業様と何らかのコミュニケーションをとっている状況です。特に「移動」「宿泊(ホテル)」「不動産オフィス・施設」の3つを注力領域としています。
まずはシックスセンシズ 京都様やANAビジネスジェット様との取り組みのように、それぞれの業界を牽引するような企業様との事例を1件ずつ積み上げていくことが直近の目標です。一つひとつの取り組みを「業界にインパクトを与えるもの」や「社会に向けてニュース性のあるもの」にしていくことが、会社とプロダクトの双方に良い影響をもたらし、TENTIALのブランド価値の向上に繋がっていくと考えています。
── まさにシックスセンシズ 京都様との取り組みは、TENTIALにとってもインパクトのあるものになりましたね。
シックスセンシズ 京都様はサステナビリティとウェルネスをテーマに、疲労回復など多彩なウェルネスプログラムを通じて、お客様を健やかな状態へと導くプランを用意されています。当初はそのプランの一環として、TENTIAL製品の導入を検討いただくことからお話が始まりました。
そこからディスカッションを重ねる中で、お互いのミッションの親和性が高く、ウェルネスやサステナビリティに対する考え方にも共感できる点が多いことが分かってきて。より多くのお客様が体験できる「全室へのアメニティ採用」の取り組みへと話が発展していったのです。
シックスセンシズ 京都様のようなコンセプトを掲げるホテルとのコラボレーションは、TENTIALが大切にしている想いを世の中に表現できるので、今後にも繋がる良い機会になったと思います。
また、今回採用いただいたリカバリーウェアはシックスセンシズ 京都限定モデルとなっていて、お客様は客室で着用するだけでなく、ホテル内のブティックで購入することもできます。TENTIALとしてもブティックでの販売は初めての試みになったのですが、4月のオープンから数か月で予定数を完売するなど予想以上に好評で、追加分の発注も決まりました。
「実際にホテルでTENTIALの製品を体験いただき、その場ですぐにご購入いただける」という新しいカスタマージャーニーのモデルを確立できれば、TENTIALのtoBビジネスがさらに加速していくのではないかとワクワクしています。
── 具体的な内容もさることながら、議論の過程で取り組みの幅が拡張されていったというお話が興味深いです。
当初はホテルの体験を設計する宿泊部門の方々とお話をしていたのですが、現在はマーケティング部門の方との議論も始まっています。製品を提供するだけではなく、今回の取り組みをどのように表現していくのがいいのか、その点も一緒に検討しているんです。
私としても、「アメニティ業者の中の1社」とは思われたくない。TENTIALと一緒なら、自分たちの想いや取り組みをお客様にきちんと伝えることができる。そのような、強力なパートナーだと感じてもらえることが重要だと考えています。
── 移動領域では、4月にANAビジネスジェット様との取り組みも発表されました。
フライト中は気圧の変化が激しいだけではなく、同じ姿勢を長時間維持する必要があることから血流が悪化し、筋肉のコリや痛みなどを伴うことがあります。今回の協業はビジネスジェット機をチャーターするお客様の一部を対象にTENTIAL製品を提供し、フライト中のコンディショニングをサポートすることを目的としたものです。
ANAビジネスジェット様では「時間価値の最大化」にこだわりを持って、サービスを展開されています。フライト中のコンディショニングによって移動時間がより快適なものになるという考えに共感いただいたことから、この取り組みが実現しました。移動中のリラックスした時間を「心身の回復の時間」に変えていく、そのような価値の提供を目指していきます。
飛行機のように長時間の移動ビジネスを手がける企業とプロジェクトを推進していくことで、ゆくゆくは新幹線など、より短時間の移動ビジネスにおけるコンディショニングのサポートにも広げていけないかと考えているんです。
そのためには、今後の広がりを見据えて「適切な動線」についての構想も練っていかなければなりません。
例えばパブリックなスペースでリカバリーウェアに着替えることは難しいですから、免税店にTENTIALの製品を置いていただき、あらかじめ着替えた状態で飛行機に搭乗してもらえるような体験を実現できないか。もしくはエグゼクティブラウンジのような場所にリカバリーサンダルを置いていただき、気軽に履き替えられるような空間を作れないか。
常にそういったストーリーを考えながら、今できることに一つひとつ取り組んでいくイメージで仕事をしています。
今は「点」の取り組みであっても、ゆくゆくはそれを「線」にして結び、「面」へと繋げていく。これからのTENTIALのtoBビジネスにおける道筋を作るとともに、toCビジネスにもシナジーを生み出していきたいです。
「製品を販売する」ではなく「ミッションや思想への共感者を増やす」
── 企業の方々にしてからすると、TENTIAはまだまだ若いスタートアップです。toB事業の実績も少ない中で、どのように関係性を築いているのでしょうか。
もちろん断られることもありますし、話を聞いていただけたとしても、具体的な取り組みに至らないこともあります。
ただ、私の強みはtoB事業の領域で長く働いてきた事で築いたリレーションと、お客さまとのコミュニケーションを通じてドアを開けていくスキルです。お話する機会をいただいた際は、少しでも「TENTIALと一緒に表現してみたい」と感じていただけるポイントを作れないか、常に試行錯誤しています。
今の私の仕事の1つは、相手の中のTENTIALに対するイメージを、「個人向けのリカバリー製品を作っている会社」から「コンディショニングという概念を本気で広げていこうとしている会社」へと変えることだと考えているんです。実際に会話を通じて印象が変わっていくことが分かると、すごく楽しいんですよ。
だから製品を販売するというよりも、まずは会社が掲げているミッションや思想を知っていただく。そこに共感して「一緒にやりたい」と思っていただける方々を、1人でも増やそうという考え方で仕事をしています。
── お話を伺っていると、セールスというよりはコンサルティングなどに近いお仕事のような印象を受けました。
そうですね。顧客起点で課題解決をする「ビジネスプロデューサー」のようなイメージかもしれません。
例えば一般的なホテルの場合、パジャマは上下セットで4000〜5000円ほどのものが使われることが多いです。でも、BAKUNEの価格は約2万円。4〜5倍のコストをかけてでもBAKUNEを選ぶ価値があると感じてもらえなければ、導入には結びつきません。
だからこそ、単に「TENTIAL製品の提案をする」という考え方では難しいように感じています。「TENTIALと一緒ならこんな空間を実現できる」「このような体験をお客様に届けられる」といった部分をプロデュースしていく必要があるんです。
── 冒頭で3つの注力領域を挙げてくださいました。業界が違っても、お客様が抱える課題感は共通している部分が多いのでしょうか。
お客様がよく使われるのが「ウェルネス」という表現です。昨年11月に開業されて話題を集めた「麻布台ヒルズ」も、Green & Wellnessがコンセプトの柱になっていたりしますよね。
不動産であれ、ホテルであれ、移動ビジネスであれ、その空間を訪れるお客様やそこで働く従業員の心身の健康を重要視する企業が、今まで以上に増えてきているように感じます。TENTIALのミッションや取り組みのお話をしていても「そこについては自分たちも真剣に考えているのだけれど、どのように表現するのが良いのか悩んでいる」という声を聞くことが多いです。
── 一方で先ほど「断られることもある」というお話もあったように、実際に協業を実現する上では乗り越えなければならない壁もあるわけですね。
もともとtoC向けに開発・販売してきた製品を、toBへと展開していく際の難しさは感じます。
そもそもtoC用の製品は使えないという声をいただくこともありますし、特注にすることができるかなど、さまざまなご要望をいただくこともあります。特に伝統のある大手企業や外資系の企業ほど、従来のレギュレーションを変えることは難しい。例えばホテルであれば業務用の洗濯機に対応できるものでなければ導入できないというケースや、そもそも家庭用製品は選定しないと決められているケースも珍しくないんです。
パブリックなスペースでは着替えを伴う製品を扱うことが難しい点や、お客様の肌に直接触れるものが多いのでレンタルやシェアのハードルが高いといった点などが課題になることもあります。
今はそのようなフィードバックを溜めながら、細かな業務上のオペレーションなども含めて「どのようにtoB向けにアレンジできるか」を試行錯誤しているところです。
── 今は専任のメンバーがラルストンさん1人ということもあり、なおさらチャレンジングな時期かもしれません。
20代の頃に戻ったような感覚があります。今はとにかくお客様の声を直接聞くことと、TENTIAL社内の仕組みや考え方への理解を深めることで「TENTIALにおけるtoB事業の在り方」を模索しているところです。
これからチームや事業部へと発展する可能性が出てきた際に、こうした経験がより戦略的に事業を拡大させるための武器になるはず。今後toBビジネスの基盤がつくれたら、組織化することによってさらに事業の規模を広げていくような取り組みにも挑戦できれば面白いですよね。
ウェルネス業界20年のベテランがTENTIALを選んだ理由
── ラルストンさんはフィットネス業界でのビジネス経験が約20年になるそうですね。
ファーストキャリアはコナミスポーツ(旧ピープル)で、10年ほど接客やセールスを中心に幅広い業務を経験しました。
当時の日本はフィットネスクラブやスポーツジムの敷居が今よりも高くて、主に富裕層の方々が利用するようなものだったんです。私が在籍していた期間は、まさに金額感なども改良しながら、月額制のサービスとしてもっと多くの人に利用してもらえるものにしようと挑戦していたタイミング。会員制ビジネスの基本やフィットネス業界における顧客サービス・セールスの基本を学ばせていただきました。
その後はアメリカのフィットネス機器メーカーでフィットネスに関わる機器を法人向けに販売したり、国内大手企業の新規事業として24時間ジムの立ち上げに携わったり。フィットネスCRMシステムの導入やフィットネスアパレル開発なども経験しました。これまでのキャリアでは、一貫して「フィットネス」や「ウェルネス」の領域で仕事を続けています。
前職ではミラーフィットという鏡型のスマートフィットネス機器を展開するスタートアップで、法人向けビジネスの立ち上げを担当していました。今までの経験は法人との事業開発がメインだったので、現在TENTIALで取り組んでいる仕事と共通する部分も多いです。
── なぜ次の挑戦の場所として、TENTIALを選ばれたのでしょうか。
自分自身のキャリアも後半戦に差し掛かってきている中で、もう一度ゼロイチのところにチャレンジをしたい。それも今まで以上に事業に入り込むというか、外資で経験した際に興味深かった「会社のブランディングに関わる部分からの事業拡大」に挑戦したいと思ったことがきっかけです。
TENTIALには自分から直接応募をしたのですが、それ自体もすごく久しぶりだったので、ワクワクしていました。
── toBビジネスに挑戦するということは、入社前から話されていたいたのでしょうか。
面接でも私の経験や得意な領域については話していましたし、TENTIALの展望も聞いていました。
toC向けの事業をtoBに拡張していくにあたっては、それに適した「ステージ」があると思うんです。toCの土台ができていないのに目先の数字や事業拡大だけにとらわれて、あせってtoBを始めても思った通りにはいかないこともあります。
その点、TENTIALはtoCビジネスの基盤が整ってきていて、売上も継続的に拡大している状況でした。会社としてもここからミッションの達成に向けてどのように事業を広げていくか、企業の価値をどのように高めていくかを考える段階を迎えていて。新たな柱としてtoBビジネスを確立することが、TENTIALの可能性を引き上げることにもつながるのではないかと感じていたんです。
── 健康という共通点はありつつ、これまで働かれていた企業とTENTIALでは少し毛色が違うような気もします。事業領域や製品についても興味を持たれたポイントがあったのでしょうか。
国内外のウェルネス業界で働いてみて、欧米に比べると日本ではフィットネスへの参加率が低く、ウェルネス・ヘルスケアの領域の方が成長すると感じていました。
多くの日本人にとって、「日常的に運動をする」ということはまだまだハードルが高い。日本の場合はハードな運動よりも、ストレッチなど身体を整えることへの意識が高い印象があります。運動への考え方については、日本の環境や外国との保険制度の違いなども関係していると思います。
今後さらに高齢化が進んでいくことも踏まえると、日本においてはカスタマージャーニーとしてフィットネスの種類もさらに細分化されていくはず。その中でもウェルネス・ヘルスケアに近いサービスが伸びていき、企業もそこを強く意識していくのではないかと考えています。その観点からも、TENTIALが目指す方向性はビジネスとしても大きな可能性があると思ったんです。
── 最後に今後チャレンジしたいことについて教えてください。
toCビジネスとして始まった製品をtoBビジネスへとアレンジしていくという点では、まだまだやれることがたくさんあると考えています。
近年はTENTIALでも直営店や小売店での販売にも力を入れていますが、個人のお客様との接点の中心はオンライン(EC)です。個人のお客様にECサイトで商品を購入いただくまでの流れと、法人のお客様にTENTIALに共感していただき、協業の意思決定をしていただくまでの流れは異なります。
だからこそ、細かな業務オペレーションの磨き込みも含めて、toBビジネスの土台を作っていくことが目下のチャレンジです。今は社内外に向けて、TENTIAL×toBビジネスの可能性を示していく、種をまいていく段階。すぐには実らなかったとしても、今後大きな花が咲くように、地道に準備を進めていきたいです。チーム化されるフェーズで自分のスキルをさらに活かせれば、現在の取り組みが意味を持ってくると思っています。
とはいえ、実績を全く作れなければ、会社としても「ここに投資をしよう」という意思決定をすることが難しい。ニュースになって世の中に伝わっていくような取り組みを1つずつ形にしながら、TENTIAL×toBビジネスの道筋を作っていきたいです。